僕は30歳を過ぎたあたりで仕事の方向性に悩み始め、
長いスランプのただ中にいた。
仕事量も貯金額も減り、
「暇もやる気もあるけれど、
何をすればいいのかわからない。
しばらく遊んで暮らすカネもない」状態だった。
結婚すれば活路が開けるだろうという甘い気持ちもあったのだと思う。
運や他人に依存するような決断が「活路」になるはずがない。
共同生活はすぐにほころび始め、
1年後には離婚することになった。
寒い冬の日だった。・・・・
離婚は苦しくて悲しい。
祝ってくれた人たちを裏切ることにもなる。
もう二度と経験したくない。・・・・・
だけど、この大失敗から僕は個人的に2つの教訓を得た。
ひとつは、心身が不調のときにリスクのある言動をするとロクなことがない、だ。
悩むなら公園でひっそり悩め。
図書館で静かに本を読め。
大きな判断をするな。
おカネも時間もかかり、
悩んでいる現実から目をそらし、
生活を変えてしまいかねないこと(結婚、転職、宗教、世界一周、各種セミナー、MBA……)には手を出すな。
やがて元気になるときまでのんびり待て。
もうひとつの教訓は、
「家族より仕事を優先すべき」だということ。
僕は仕事が不調だと元気がなくなる。
ついでに自信も失って卑屈でひがみっぽくなる。
もちろん、おカネもなくなる。
こうなると家族すら壊れてしまうことを体感した。
仕事より家族のほうが大事だからこそ、仕事を優先すべきなのだ。
大人の男性ならば当たり前の2つなのかもしれない。
僕は手痛い失敗をしてようやく身に付いた。
ふっ切れて仕事に没頭すると、
今まで思い悩んでいたのが不思議に思えるほど面白くて手応えがあった。
おカネにも少し余裕ができて私生活も立ち直り、好きな人ができた。
再婚したのは2年前。
35歳になっていた。・・・・
共働きの生活は今のところ快適だ。
共通の趣味は「飲み食い」。
晩酌を目がけてそれぞれの仕事に精を出している。
夜は早めに寝て、朝から仕事をする習慣もついた。
心身が安定しているときに結婚したら、
より楽しくて健やかな生活が送れるようになった。
人間も動物なのだから、
妊娠や出産に適齢期があるのは仕方ない。
でも、結婚には適齢期はないと感じている。
自分ひとりでも淡々と生活ができるし、
独身の気楽さも満喫しているけれど、
どこか満たされない部分がある。
日々の食事もたまの旅行も肉親とのかかわりも、
分かち合えるパートナーがいたら人生はもっと豊かになる気がする。
補完し合えるような相手が欲しい――。
このような渇望が自然と湧き上がって来た時期に結婚をすればいい。
社会としては晩婚化に伴う少子化は問題かもしれないけれど、
無理な早婚は当事者たちを不幸にするし、
「婚期」を逃した人たちを結婚から遠ざけてしまう。
35歳以上での結婚は一般的には晩婚と見なされると思う。
「割れ鍋にとじぶた」などと自嘲ぎみに語る夫婦もいる。
でも、本人たちがより幸せになり、
親しい人からも祝福される結婚であれば歓迎すべきだ、
と晩婚者のひとりとしては信じたい。
・・・・
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